障害福祉サービスのBCP義務化と未策定減算|対象と対応手順

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障害福祉サービスのBCP(業務継続計画)は、2024年4月から全サービスで策定が完全義務化され、未策定の場合は基本報酬の3%または1%が減算されます。減算の経過措置も2025年3月31日で終了しており、未策定なら今この瞬間も毎月減算されている状態です。

本記事は障害者支援施設・グループホーム・生活介護・就労系・放デイなど障害福祉サービス事業所の管理者向けに、義務化の根拠条文、減算のサービス別区分、介護保険のBCPとの違い、そして今すぐやる対応手順を、元消防局員×救急救命士×看護師の防災コンサルタントが2026年7月時点の情報で解説します。

障害福祉サービスのBCP義務化はいつから?根拠条文と現在の状況

義務化は3つの節目で段階的に進みました。

時期できごと
2021年4月(令和3年度)指定基準省令に「業務継続計画の策定等」が追加され義務化(3年間の経過措置つき)
2024年4月(令和6年度)経過措置終了で完全義務化。業務継続計画未策定減算が新設
2025年4月(令和7年度)減算側の経過措置も終了。対象サービスに全面適用

根拠は指定基準省令(平成18年厚生労働省令第171号等)の「業務継続計画の策定等」で、求められている行為は①策定 ②従業者への周知 ③研修・訓練の定期実施 ④定期的な見直しの4点セットです。「作って終わり」は条文上も認められていません。

⚠ 片方だけでは「未策定」扱いBCPは感染症と自然災害の両方が必要です。どちらか一方でも欠けていれば未策定減算の対象になります。「コロナのときに感染症BCPは作った」という事業所は、自然災害BCPの有無を今すぐ確認してください。

なお2026年6月施行の令和8年度期中改定(処遇改善加算の拡充等)では、BCP未策定減算の仕組み自体に変更はありません。減算率・対象の枠組みは令和6年度改定のまま継続しています。

BCP未策定減算の全体像|減算率3%・1%とサービス別区分

区分減算率主なサービス
施設・居住系所定単位数の3%障害者支援施設(施設入所支援)、共同生活援助(グループホーム)、療養介護、短期入所、宿泊型自立訓練など
その他所定単位数の1%生活介護、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅介護、相談支援など

減算はいつから、どこまで遡るのか

減算は「基準を満たさない事実が生じた月」から「解消した月」まで、利用者全員分に適用されます。運営指導で発覚した場合は発覚時点ではなく事実発生時点まで遡るため、返還額は数百万円規模になり得ます。仕組みの詳細はBCP未策定減算とは?減算率・対象・回避方法で解説しています(介護保険側の記事ですが減算の構造は同型です)。

実額イメージ

事業所例月間報酬の仮定減算額/月12か月遡及なら
グループホーム(3%)400万円12万円144万円
就労継続支援B型(1%)300万円3万円36万円
放課後等デイサービス(1%)350万円3.5万円42万円

就労選択支援は2027年3月31日まで経過措置

2025年10月に始まった就労選択支援については、令和9年(2027年)3月31日までの経過措置が設けられています。ただし体制整備には時間がかかるため、期限を待たずに整備を始めるのが安全です。

「策定したのに減算」される3パターン

  • 感染症・自然災害の片方しかない
  • 計画はあるが、計画に定めた必要な措置(備蓄・体制整備等)が講じられていない
  • 法人本部の計画を流用し、事業所の実態と紐づいていない(事業所名・体制・連絡先が別物)

介護保険のBCPと何が違う?障害福祉ならではの4つの論点

ネット上の解説は介護保険向けの流用が多いのですが、障害福祉には固有の論点があります。

① 利用者特性で「避難の書き分け」が必要

  • 知的障害・自閉スペクトラム症…急な環境変化でパニックになり得る。「いつもと同じ」を保つ工夫(視覚支援・慣れた職員の声かけ)を避難手順に組み込む
  • 精神障害…服薬継続が最優先業務になる。処方情報の持ち出しを手順化
  • 身体障害・重症心身障害…搬送人手の見積りが介護施設以上に重要。医療的ケア(吸引・注入・人工呼吸器)の電源確保が生死に直結

② 障害者グループホームの夜間1人体制

障害者GHの夜間は世話人・夜間支援員1名という体制が珍しくありません。特養の夜勤2〜3名より条件が厳しく、「夜間に1人で何ができて、何ができないか」を計画に正直に書くことが出発点になります。夜間想定の考え方は夜間避難訓練マニュアルが参考になります。

夜間1人で、利用者全員を避難させられますか?

夜間の職員数と利用者数を入れるだけで、避難体制のリスクを1分で判定します(無料・入力データは送信されません)。

所要約1分/入力内容が送信されることはありません

③ 就労系の固有論点:日中活動の停止と工賃

就労継続支援では、事業停止が利用者の工賃と受注先への納期に直結します。BCPの優先業務には「利用者の安全確保」と並んで「生産活動をいつ・どの水準で再開するか」「受注先への連絡」を書き込む必要があります。これは介護のひな形には無い観点です。

④ ひな形の様式構造が介護と違う

障害福祉向けは、感染症BCPひな形が3区分(入所・入居/通所/訪問)に分かれ、自然災害BCPひな形は1種類という構造です。自事業所の類型に合った様式を選ぶところから始めてください。

障害福祉のBCPひな形と書き方|手が止まる欄の埋め方

ひな形は厚生労働省の「障害福祉サービス事業所等における業務継続計画(BCP)作成支援」ページで無償公開されており、作成支援の研修動画も揃っています。書き方の一般的なコツはBCPひな形の使い方BCPの作り方5ステップと共通ですが、障害福祉で特に手が止まる3つの欄について要点を示します。

優先業務:命に直結する順で3段階に切る

優先度入所・GHの例就労系・通所の例
最優先服薬・食事・水分・排泄・医療的ケア・安否確認利用者の安否確認・帰宅/待機の判断・家族連絡
継続体位変換・見守り・家族連絡利用予定の調整・行政への報告
縮小・中止入浴・日中活動・行事生産活動・送迎(安全確認まで)・イベント

参集可能人数:実数で見積もる

「速やかに参集」ではなく、職員の居住地から「発災後6時間で◯名、24時間で◯名」と実数で書きます。夜間1人体制のGHでは、応援が来るまでの空白時間こそが計画の核心です。

備蓄量:水は1人1日3Lで人数×日数

利用者+参集職員分を最低3日(推奨7日)で算定します。服薬中の利用者が多い事業所は、処方薬リストの写しと数日分の予備薬の扱いを主治医・薬局と相談して計画に明記してください。

研修・訓練の義務|年何回・何をやり・どう記録に残すか

区分研修訓練
障害者支援施設など施設系年2回以上年2回以上
その他の障害福祉サービス年1回以上年1回以上

感染症BCPと自然災害BCPはそれぞれカウントし、感染症対策の研修・訓練や防災訓練との一体実施が認められています。1回目は机上訓練(60分・会議室)で十分です。進め方は感染症BCPの机上訓練シナリオ、記録の書き方はBCP研修の感想文・記録の書き方をそのまま使えます。

💡 訓練記録に必ず残す6項目①日時・場所 ②参加者(職種・人数)③種別(自然災害か感染症か)④シナリオと実施内容 ⑤判明した課題 ⑥BCPへの反映(担当・期限)。特に③の種別漏れは「片方しか実施していない」と見なされる典型パターンです。

今すぐやる対応手順7ステップと運営指導で見られる書類

  1. 現状確認…感染症・自然災害の両方の計画があるか(30分)
  2. 様式の入手…厚労省ひな形から自事業所の類型に合うものを選ぶ(30分)
  3. 体制と発動基準を決める…責任者・代行者2次まで、震度・警戒レベルの数値基準(会議1回)
  4. 被害想定と優先業務…ハザードマップ確認+3段階の業務仕分け(会議1回)
  5. 参集・備蓄の数値化…実数の見積りと在庫照合(1〜2週間)
  6. 周知と研修・訓練…全職員への説明会+机上訓練を実施し記録(1か月以内)
  7. 見直しのサイクル化…年1回+訓練後・体制変更後に改訂し、改訂履歴を残す

運営指導で提出を求められる書類チェックリスト

  • 業務継続計画(感染症・自然災害の両方)の現物
  • 研修の実施記録/訓練の実施記録(種別が分かる形で)
  • 周知の記録(説明会議事録・回覧記録)
  • 見直し・改訂の履歴
  • 非常災害対策に関する具体的計画・避難確保計画(該当する場合)
  • 備蓄品リストと実在庫の一致

なお非常災害対策計画・避難確保計画とBCPは根拠も提出先も異なる別の計画です。3つの関係は非常災害対策計画とBCPの違いで整理しています。

よくある質問

障害福祉サービスのBCPはいつから義務化されましたか?

2021年4月に指定基準省令で義務化され、3年の経過措置を経て2024年4月から完全義務化されています。同時に業務継続計画未策定減算が新設され、減算側の経過措置も2025年3月31日で終了しました。

未策定減算は何%減算されますか?

障害者支援施設・グループホームなど施設・居住系サービスは所定単位数の3%、生活介護・就労系・放デイ・居宅介護など、その他のサービスは1%です。基準を満たさない事実が生じた月から解消月まで、利用者全員分に適用されます。

感染症BCPと自然災害BCPは両方必要ですか?

両方必要です。いずれか一方でも未策定なら減算の対象になります。1冊にまとめること自体は可能ですが、両方の記載事項が揃っていることが前提です。

研修・訓練は年何回必要ですか?

施設系は研修・訓練とも年2回以上、その他のサービスは年1回以上が基準です。感染症と自然災害はそれぞれカウントします。机上訓練でも、シナリオ・参加者・課題を記録すれば訓練実績になります。

就労選択支援もBCP未策定減算の対象ですか?

就労選択支援には令和9年(2027年)3月31日までの経過措置が設けられています。ただし研修・訓練を含む体制整備には時間がかかるため、期限前の整備開始をおすすめします。

まとめ

✓ この記事のまとめ

  • 障害福祉のBCPは2024年4月完全義務化・2025年4月から減算全面適用
  • 減算は施設・居住系3%/その他1%。感染症・自然災害の片方欠けでも対象
  • 就労選択支援のみ2027年3月31日まで経過措置
  • 障害福祉固有の論点は利用者特性・GHの夜間1人体制・就労系の生産活動・様式構造
  • 研修・訓練は施設系年2回以上・その他年1回以上、記録に種別を明記(2026年7月時点の情報)

障害福祉のBCP、書類と実効性の両面を支援します

元消防局員×救急救命士×看護師が、減算要件のチェックから夜間1人体制での避難シミュレーション、机上訓練の設計まで伴走します。「うちは大丈夫か」の確認だけでも歓迎です。

お電話 070-9445-5546(平日9:00〜17:00)/支援は大阪・近畿中心、ご相談はオンラインで全国対応

この記事の監修

奥野雅也(サニーアライズ代表)。元消防局員として災害・救急の現場を経験。救急救命士・看護師。介護・福祉施設の防災訓練・BCP策定支援と、避難力を数値化する「MTED診断」を提供。代表プロフィールを見る

参考資料(一次資料)

  • 障害福祉サービス等の指定基準省令(平成18年厚生労働省令第171号ほか)「業務継続計画の策定等」
  • 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定関係資料(業務継続計画未策定減算の新設・経過措置)
  • 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における業務継続計画(BCP)作成支援」(ひな形・研修動画)
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