介護BCPの作り方5ステップ|記入例と実効性チェックリスト

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介護BCP(業務継続計画)は、①推進体制を決める ②リスクを把握する ③優先業務を選ぶ ④対応手順を書く ⑤研修・訓練で検証するの5ステップで作れます。厚生労働省のひな形を使えば実費はかかりません。

本記事は介護事業所の管理者・BCP担当者向けに、各ステップの具体的な記入例、書いた後に必ず行うべき実効性の検証方法、そしてよくある失敗を、元消防局員×救急救命士×看護師の防災コンサルタントが解説します。「埋めたけれど機能するか不安」を解消する構成です。

BCPと防災マニュアルの違い|「避難した後」を決めるのがBCP

BCP(業務継続計画)とは、災害や感染症が発生しても事業を継続・早期復旧するための計画です。防災マニュアルが「命を守るまで」を扱うのに対し、BCPは「避難した後、どの業務をどう続けるか」を決めます。

防災マニュアル・非常災害対策計画BCP
目的命を守る(避難・初期消火・安否確認)業務を続ける・早期に戻す
時間軸発災直後〜数時間発災直後〜数日・数週間
中心テーマ避難誘導、消火、通報優先業務、人員、備蓄、代替手段

3つの計画(非常災害対策計画・避難確保計画・BCP)の関係は避難確保計画・非常災害対策計画・BCPの違いで整理しています。

STEP1 推進体制を決める【記入例つき】

まず「誰が決めるか」を決めます。ここが曖昧だと、以降のすべてが進みません。

記入例:推進体制

役割担当者代行者(1次)代行者(2次)
統括責任者施設長事務長介護主任
安否確認・情報班事務長相談員
避難誘導・利用者対応班介護主任各ユニットリーダー
医療・衛生班看護師

⚠ ここで差がつく代行者を2次まで決めることが重要です。夜間・休日は統括責任者が不在なのが通常で、「施設長に連絡がつくまで動けない」状態を避ける必要があります。夜勤リーダーが初動を判断できるところまで権限を下ろしてください。

STEP2 リスクを把握する【ハザードマップの見方】

自施設が「何に弱いか」を数値で押さえます。国土交通省のハザードマップポータルや自治体のマップで次の4点を確認してください。

  • 想定最大浸水深(0.5mで床上、3mで2階の床上)
  • 想定浸水継続時間(孤立期間の目安)
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域・土砂災害警戒区域に該当するか
  • 想定震度とライフラインの復旧見込み

記入例:被害想定

項目記入例
想定災害◯◯川の氾濫(想定浸水深2.0m・継続12時間)/震度6弱の地震
区域該当洪水浸水想定区域内。家屋倒壊等氾濫想定区域は非該当
ライフライン停電3日、断水7日を想定(自治体の想定を採用)
建物・設備1階に厨房・電気室あり。浸水時は使用不能

「停電3日・断水7日」はひな形の記入例にもある数値ですが、自治体の想定に置き換えてください。記入例のまま残すのが最頻の失敗です。

STEP3 優先業務を選ぶ【止める勇気を決める】

ここがBCPの核心です。職員が半分しか来られない状況で、何を続け、何を止めるかを平時に決めておきます。

優先度業務理由
最優先(必ず継続)与薬・与食・水分補給・排泄介助・医療的ケア(吸引・経管栄養)・安否確認生命維持に直結
優先体位変換、見守り、家族への連絡健康被害の防止
縮小・中止(当面)入浴、レクリエーション、リハビリ(維持的なもの)、行事、会議、記録の詳細入力数日の中断が許容できる

必要人員を数値で出す

ひな形は「出勤率30%・発災後6時間」という条件で必要人員を計算する前提で作られています。この数字を自施設で検証してください。

  • 職員の居住地から徒歩・自転車で来られる人数を数える
  • 家庭の事情(小さな子ども・要介護家族)で来られない人数を控除する
  • 「発災後6時間で◯名、24時間で◯名」と実数で書く

STEP4 対応手順を書く【時間軸で書くのがコツ】

手順は「誰が・いつ・何をするか」を時間軸で書きます。箇条書きの羅列ではなく、時間で区切ると現場で使えます。

時間帯やること担当
発災〜10分身の安全確保、揺れ収束後に居室巡回(安否確認開始)その場の職員全員
10〜30分安否確認の完了、火元確認、負傷者の対応、建物被害の確認夜勤リーダー
30分〜1時間参集連絡、ライフライン確認、業務縮小の判断、家族連絡の開始統括責任者(不在時は夜勤リーダー)
1〜6時間優先業務への移行、備蓄の使用開始、他施設・行政への連絡各班
6時間〜3日職員のシフト再編(泊まり込み体制)、物資の追加調達統括責任者

記入例:BCP発動基準

「震度5強以上の地震が発生したとき」「警戒レベル3が発令されたとき」「職員の出勤が通常の◯割を下回ると見込まれるとき」など、誰が見ても同じ判断になる基準で書いてください。「大規模災害時」のような表現では発動できません。

手順を書く前に、夜間の避難力を数値で確認

夜間の職員数と入居者数を入れるだけで、避難体制のリスクを1分で判定します。この数値がBCPの前提になります(無料・データ送信なし)。

所要約1分/入力内容が送信されることはありません

STEP5 研修・訓練で検証する

研修・訓練は義務であると同時に、計画が機能するかを確かめる唯一の方法です。回数は施設系が年2回以上、通所・訪問系が年1回以上(自然災害・感染症それぞれ)。詳細は介護のBCP訓練は年何回?で解説しています。

訓練で課題が出たら計画を直す——この往復があって初めてBCPは生きた文書になります。見直しの手順はBCPの見直しは年1回で足りる?をご覧ください。

書いた後が本番|実効性チェックリスト

ひな形を埋め終えたら、次の3つを実測してください。ここまでやって初めて「作った」と言えます。

① 夜間最少人員での避難時間

夜勤の実人数で、居室から安全な区画まで1人を動かすのに何分かかるかを測ります。「消防隊到着まで8〜10分」で何人動かせるかが分かれば、計画の前提が固まります。

② 参集シミュレーション

連絡網を実際に回してみて、何分で何人と連絡がついたかを記録します。夜間に電話が繋がらない番号が必ず見つかります。

③ 備蓄の実在庫との照合

計画に書いた備蓄量と実在庫を突き合わせます。数量・期限・保管場所の3点をチェックしてください。算定方法は介護施設の備蓄品リスト|何日分必要かの計算式で解説しています。

よくある失敗5つ

  • 記入例の数字がそのまま残っている(出勤率30%、停電3日など)
  • 夜間の手順が書かれていない(日中の人員前提のみ)
  • 参集基準が「速やかに出勤」のまま
  • 感染症編を作っていない(自然災害編だけで「策定済み」と思っている)
  • 作ったが職員に周知していない(存在を知らない職員がいる)

よくある質問

BCPは何から作り始めればいいですか?

推進体制(誰が決めるか)から始めてください。次にハザードマップで被害想定を固め、優先業務の選定へ進みます。厚労省のひな形と作成支援動画(業態別・各約60分)を併走させるのが最短です。

自然災害と感染症の2本が必要ですか?

必要です。BCP未策定減算は「感染症または自然災害のいずれか又は両方が未策定」の場合に適用されるため、両方を策定してください。1つのファイルに統合しても構いませんが、両方の内容が揃っていることが必要です。

どれくらいの期間で作れますか?

項目を埋めるだけなら数時間で形になりますが、被害想定・優先業務・参集人数を実態に合わせて詰めると、委員会を複数回開く必要があります。1〜2か月で作り、その後の訓練で磨くのが現実的な進め方です。

優先業務の選定で迷ったらどうすればいいですか?

「1日止めたら命に関わるか」で切ってください。与薬・与食・水分・排泄・医療的ケア・安否確認は最優先、入浴・レク・行事は当面中止で構いません。止める業務を明記することが、現場が迷わないための最大の支援になります。

まとめ

✓ この記事のまとめ

  • 作り方は①推進体制 ②リスク把握 ③優先業務 ④対応手順 ⑤研修・訓練の5ステップ
  • 代行者は2次まで決め、夜勤リーダーが初動を判断できる形にする
  • 優先業務は「止める業務」を明記するのがポイント
  • 発動基準は誰が見ても同じ判断になる数値で書く
  • 書いた後に避難時間・参集・備蓄を実測して初めて完成(2026年7月時点の情報)

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元消防局員×救急救命士×看護師が、夜間の避難シミュレーション、参集人数の算定、訓練の設計まで支援します。書きかけの計画のレビューだけでもご相談ください。

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この記事の監修

奥野雅也(サニーアライズ代表)。元消防局員として災害・救急の現場を経験。救急救命士・看護師。介護・福祉施設の防災訓練・BCP策定支援と、避難力を数値化する「MTED診断」を提供。代表プロフィールを見る

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