介護施設がBCP策定を外注する費用は、策定支援でおよそ5万〜80万円、訓練支援が1回5万〜20万円、運用顧問が月額数千円〜数万円が実勢の幅です。「BCPコンサルは200万〜3,000万円」という数字も出回っていますが、これは従業員数百人規模の一般企業向けで、介護事業所には当てはまりません。
本記事は介護・障害福祉事業所の管理者・経営層向けに、費用の類型別レンジ、同じ「策定支援」で価格が10倍違う理由、自作と外注の損益分岐点、そして失敗しない選び方5基準を、元消防局員×救急救命士×看護師の防災コンサルタントが解説します。
BCPコンサル費用の相場は?介護施設向け3類型の料金レンジ
介護向けの支援は、支援内容によって3つの類型に分かれます。金額は公開されている料金表から幅で示しています(実際の見積りは事業所数・サービス種別で変わります)。
| 類型 | 費用の目安 | 含まれる内容 |
|---|---|---|
| ① 策定支援・作成代行 | 5万〜80万円 | ヒアリング→計画書の作成。ひな形転記型は安く、実情反映型は高い |
| ② 研修・訓練支援 | 1回5万〜20万円 (講師派遣は1日30万〜50万円の例も) | 研修の講師、机上訓練の設計と進行、講評 |
| ③ 運用顧問・見直し支援 | 初期10万円前後+月額数千円〜数万円 | 年間の訓練設計、見直し伴走、運営指導前の点検 |
⚠ 桁違いの数字に惑わされない「BCPコンサル費用200万〜3,000万円」という相場は、従業員100〜500名以上の一般企業を想定したものです。介護事業所の運営基準対応であれば、上表の範囲で収まるのが通常です。見積りが桁違いに高い場合は、何が含まれているのかを必ず確認してください。
事業所数・サービス種別で加算される
多くの事業者が「1事業所あたり5万〜8万円」の追加料金を設定しています。複数事業所・複数サービスを運営している法人は、この加算方式で総額が大きく変わるため、見積り時に事業所数を正確に伝えてください。
なぜ同じ「BCP策定支援」で価格が10倍違うのか
5万円と80万円で何が違うのか。価格差の正体は次の3点です。
| 比較軸 | 低価格帯(5万〜15万円) | 高価格帯(40万〜80万円) |
|---|---|---|
| ヒアリング量 | フォーム記入のみ、または面談1回 | オンライン複数回+現地訪問 |
| 成果物の到達点 | ひな形の穴埋め(形式要件は満たす) | 自施設の実情反映+訓練シナリオまで |
| ゴール設定 | 減算回避 | 運営指導対応+実効性の検証 |
減算回避だけなら「計画書があること」で足りる
BCP未策定減算の算定要件は「計画の未策定」と「計画に沿った必要な措置の未実施」です。周知・研修・訓練・見直しの実施は算定要件に含まれていません(厚労省Q&A 問164)。つまり減算だけを避けたいなら、低価格帯でも目的は達成できます。詳細はBCP未策定減算とは?をご覧ください。
ただし運営指導は別の話
運営指導では計画の現物に加え、研修・訓練の記録と見直しの状況が確認されます。ヒアリングで「夜勤帯に発災したら誰が何をしますか」と問われることもあり、書式だけ整えた計画では説明に窮します。ここが価格帯を分ける実質的な差です。
見積書で必ず確認する4項目
- 料金体系…一括/月額/段階払いのどれか
- 成果物…何が納品されるか(計画書のみ/様式一式/訓練シナリオ)
- 回数…ヒアリング・修正の回数上限
- 追加費用の発生条件…事業所追加、研修追加、翌年の見直し
自作と外注、どちらが得か|工数と減算リスクで比較する
自作の実費はゼロ
厚生労働省のひな形・記載例・作成支援動画はすべて無料で公開されています。自治体でも防災研修や専門アドバイザーによる個別相談を無料で提供している例があります。お金をかけずに作る道は用意されているのが前提です。使い方は介護BCPひな形(厚労省)の使い方で解説しています。
ただし「隠れコスト」がある
自作の実質コストは管理者の工数です。ハザードマップの確認、優先業務の選定、参集人数の算定、様式の記入、委員会での審議——一通りやると30時間程度かかります。時間単価3,000円で計算すれば約9万円の人件費です。
未策定減算のインパクトを試算する
| 類型 | 基本報酬月額の仮定 | 減算額/月 | 6か月遡及した場合 |
|---|---|---|---|
| 特養(3%) | 1,000万円 | 30万円 | 180万円 |
| グループホーム(3%) | 500万円 | 15万円 | 90万円 |
| 通所介護(1%) | 400万円 | 4万円 | 24万円 |
運営指導で未策定が発覚した場合、減算は発覚時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用されます。上表のとおり、外注費用と比べて桁が変わる金額になり得ます。この非対称性が「まず計画書を整える」ことの経済合理性です。
外注すべき施設・自作でよい施設|判断チェックリスト
外注が向くケース
- 複数事業所・複数サービス種別を運営している
- 夜間の職員配置が薄く、避難の実現性に不安がある
- 過去の運営指導でBCP関連の指摘を受けた
- 担当者が兼務で、まとまった時間を確保できない
自作でよいケース
- 単一の小規模事業所
- 担当者に30時間程度を確保できる
- すでに非常災害対策計画・避難確保計画が整っている
- ひな形の項目を自施設の言葉で書き換えられる
💡 現実的な中間解計画書は自作し、訓練とレビューだけ外注する——これが費用を抑えつつ実効性を上げる最もバランスのよい選択です。「作ったが機能するか不安」という状態なら、策定費用より訓練に予算を回したほうが効果があります。
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失敗しないBCPコンサルの選び方5基準
- 介護保険法・障害者総合支援法の運営基準と減算要件に精通しているか…一般企業向けBCPと介護の運営基準対応は別物です
- 現場経験があるか…消防・救急・看護の実務を通った人が関わっているか。書式だけなら誰でも作れます
- 避難力を数値化できるか…「夜勤◯名で◯分に◯人」を示せるか。ここができないと実効性の議論になりません
- 納品後の訓練・見直しまで伴走するか…BCPは作って終わりではありません
- 見積書に成果物・回数・追加費用が明記されているか
契約前に聞いておく質問(そのまま使えます)
- 「夜勤帯の避難について、どこまで検証してもらえますか?」
- 「納品物には訓練シナリオが含まれますか?」
- 「運営指導で指摘された場合、対応の支援はありますか?」
- 「翌年度の見直しは別料金ですか?」
- 「介護施設での支援実績を教えてください」
外注費用を抑える3つの方法
① 自治体の補助金を活用する
BCP策定費用の一部を補助する制度を設けている自治体があります(補助率1/2・上限10万〜20万円程度の例)。年度ごとに公募されるため、介護施設が使えるBCP・防災の補助金まとめで最新の考え方を確認してください。
② 無料の公的リソースで下地を作る
厚労省のひな形と作成支援動画で計画書の骨格を作り、外注は「レビューと訓練」に絞ると費用が大きく下がります。何もない状態から丸ごと依頼するより、たたき台がある状態での相談のほうが単価も下がりやすいです。
③ 近隣施設と共同で実施する
研修や机上訓練は、近隣の複数施設で合同開催すると1施設あたりの負担が下がります。他施設との連携はBCPに書くべき項目でもあるため、共同実施はそれ自体が計画の充実につながります。
よくある質問
BCPコンサルの費用相場はいくらですか?
介護事業所の場合、策定支援が5万〜80万円、訓練支援が1回5万〜20万円、運用顧問が月額数千円〜数万円が実勢の幅です。一般企業向けの200万〜3,000万円という相場は規模も内容も異なるため、介護事業所の判断材料にはなりません。
BCPは自分たちで作れますか?
作れます。厚労省のひな形・記載例・作成支援動画がすべて無料で公開されています。ただし担当者の工数として30時間程度を見込む必要があり、夜間の避難シミュレーションなど実効性の検証は外部の目があると精度が上がります。
安いプランでも減算は回避できますか?
減算の算定要件は「計画の策定」と「計画に沿った必要な措置の実施」なので、計画書が整えば形式上は回避できます。ただし運営指導では研修・訓練の記録や計画の内容と実態の整合性が確認されるため、そこまで見据えるなら支援範囲を確認してください。
社労士・行政書士とコンサル会社のどちらに頼むべきですか?
書式・法令要件の整備は士業が得意で、費用も抑えられる傾向があります。一方で夜間の避難可否や訓練の設計といった現場の実効性は、防災・救急の実務経験がある支援者のほうが精度が高くなります。目的(減算回避か実効性か)で選び分けてください。
まとめ
✓ この記事のまとめ
- 介護向けの費用は策定5万〜80万円/訓練1回5万〜20万円/顧問 月額数千円〜
- 価格差の正体はヒアリング量・成果物の到達点・ゴール設定(減算回避か実効性か)
- 自作の実費はゼロだが工数30時間程度。減算は遡及すると桁が変わる
- 現実的な中間解は「計画書は自作、訓練とレビューを外注」
- 選び方は①介護の制度知識②現場経験③数値化力④伴走⑤見積りの明確さ(2026年7月時点の情報)
見積り比較の前に、必要な支援範囲を整理しませんか
サニーアライズは元消防局員×救急救命士×看護師の視点で、策定支援・実践型訓練・防災顧問をご用意しています。「自作でいけるか」のご相談だけでも歓迎です。費用のお見積りは無料です。
お電話 070-9445-5546(平日9:00〜17:00)/支援は大阪・近畿中心、ご相談はオンラインで全国対応
この記事の監修
奥野雅也(サニーアライズ代表)。元消防局員として災害・救急の現場を経験。救急救命士・看護師。介護・福祉施設の防災訓練・BCP策定支援と、避難力を数値化する「MTED診断」を提供。代表プロフィールを見る
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(問164〜166=減算の要件・遡及適用)
- 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援」(無料のひな形・動画)
- 各支援事業者の公開料金表(2026年7月時点で確認した範囲の幅を記載)
